読書記録:石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか
昔から枯渇詐欺の続く石油の埋蔵量は果たしてどれくらいあるのか・・興味を引くタイトルだ。
中身はタイトルに関する話にとどまらず、旬なシェールオイルの話からエネルギーとは何かという根本的な話、日本の将来のエネルギー政策の在り方にまで多岐に論が展開される。どれも読者がわかるよう平易に解説されていてかなりわかりやすい。
タイトルに対する答えは、石油の総数を示す資源量と、そこから実際に採掘可能な埋蔵量という概念の二つがあるうえで、両方の数値が推測でしか導けないものであるから、技術の進歩により採掘可能量が増えたり、新しい油田が発見されれば石油の総数が増えたりすることで、埋蔵量・資源量が変化し枯渇詐欺が起きているのだと理解した。
将来のエネルギー政策を語る章では、特に3.11後の再生可能エネルギーへの転換について、ただ単に安全・クリーンなエネルギーだからよい、という一元的な見方でよいのか?と警鐘を鳴らしているように感じられた。
このほか、印象にの残った記述(一部自分で他メディア使って調べなおして記述)。
・地中に眠る油田を掘り当てるのは至難の業。人工的に地震を起こしたり、地形や環境条件からアタリをつけ、試掘してはじめてその結果がわかる。
・試掘でさえ非常に費用が掛かる。海底で試掘をするとなおさら。試掘の結果はずれると、その地域の地価情報は手に入るが、実質的な利益は0。
・そのため、石油採掘プロジェクトはオールオアナッシングでハイリターンハイリスクの事業。
・日本が第二次世界大戦に走ったのはアメリカから原油輸出を禁止されたため。
・現在もアメリカは原油の輸出を禁止している(日本のみならず世界に対して)
※ とおもったら、2016年にオバマが原油輸出解禁している。
・アメリカでは油田の土地を持つ地権者が油田に眠る石油の利権を持っているが、日本を含めた多くの他国では地権者ではなく国がその権利を持つ。
・石油の多く(66%ほど)は輸出されている一方、天然ガスや石炭は自消率が高い(天然ガスの輸出率は30%ほど、石炭は15%ほど)。
・カナダ、ブラジルは全発電量に占める水力発電の割合が20~30%と高い。
・世界の原油市場は大きく欧州、米、アジアの3つ。このうちアジアの原油指標となっているのはドバイ産とオマーン産の石油。
・オランダのロイヤルダッチシェルは、未来の経済状態を見通す「シナリオ」を定期的に作成しているが、このシナリオによって、セブンシスターズで唯一、オイルショックの到来を予言してた。シナリオの最新版は⇓
・国のエネルギー政策を考えるうえで土台となるのは、その国がどう在りたいかという、国が目指す目標である。
エネルギーが持つ力の強さを再認識した一冊だった。